セラピストにむけた情報発信



fMRIを用いたニューロフィードバック(国際心理学会報告1)



2008年7月29日

7月20−25日にドイツのベルリンで開催された,国際心理学会に参加しました.

この学会は,4年に一度開催される学会です.規模が大きいだけにお祭り的な要素も大きく,専門的な知識を獲得するにはやや物足りない印象もありました.

ただし,いくつかの研究は,リハビリテーションへの応用可能性を考える上で非常に有用と考えましたので,ここでその1つをご紹介いたします.


●fMRIを用いたニューロフィードバック

脳波などの生理指標の活動の様子を参加者にオンラインでフィードバックすることで,その生理指標の活動レベルをコントロールできるようにトレーニングする方法を,ニューロフィードバック(neuro-feedback)と言います.生理心理学的研究では,古くからバイオフィードバック(bio-feedback),すなわち筋電図などの生理活動をフィードバックすることによって,トレーニングすることの効果について検討してきました.ニューロフィードバックは,それを脳活動のレベルで検討する試みです.これまで,ニューロフィードバックは脳波(EEG)などを使って,感情レベルをコントロールするような試みがなされてきました.

今回の学会発表では,fMRIをニューロフィードバックに使おうという試みが発表されました.ニューロフィードバックでは,活動の様子を即座にフィードバックすることが求められますので,これは技術的には決して簡単ではありません.しかし,もしこの技術が発展すれば,脳の特定部位の活動を意図的に高めたり,逆に低めたりすることが,可能になるかもしれません. “10年後には当り前の技術になっているかもしれない”,そんな期待を予感させる研究でした.

以下の参考文献では,ニューロフィードバックによって島皮質(insula)の活動を調整できることが報告されています.

Caria A et al. Regulation of anterior insular cortex activity using real-time fMRI. Neuroimage 35, 1238-1246, 2007

Weiskopf N et al. Real-time functional magnetic resonance imaging: methods and applications. Magn Reson Imaging 25, 989-1003, 2007


なお次回の国際心理学会は,4年後の2012年,南アフリカのケープタウンで開催される予定です.



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